早池峰山の南斜面に形成される雲が早池峰山の高山植物の生育に役立っているという説を岩手日報論壇に投稿して掲載されましたが、薬師岳に登って早池峰山に実際に雲ができる様子を観察してきました。

実際に薬師岳から早池峰山の雲を見ていると、県道紫波江繋線に沿って西(紫波)と東(宮古)方面から同時に雲がやってきます。その雲は早池峰山の斜面に沿って上昇し、頂上付近でぶつかってさらに上へあがります。

宮沢賢治が「早池峰山巓」で早池峰山の雲を「北は、渦巻く雲の髪」と称したのは、東西から来た雲が早池峰山の斜面を登って頂上でぶつかって、渦を巻きながら上に登っていく状態を表現していたものと思われました。

東西からやってくる雲
早池峰山の頂上で東西からやってきた雲がぶつかる
頂上でぶつかった雲が渦を巻いて頂上から真上に上がっていく
雲は短時間で変化し、雲の標高が下がってくると、高山植物帯に雲がかかる。この現象により真夏でも南斜面の高山植物に水分が供給される。この雲があることによって、早池峰山の高山植物が生きながらえることが出来たと思われます。植物の生育に不適な蛇紋岩、南斜面の過酷な乾燥、県道紫波江繋線に沿って運ばれてくる水蒸気と雲による水分補給、これらが揃うことにより氷河期から生き残ってきた早池峰山の高山植物は奇跡の植物といえると思います。
薬師岳の岩陰で光っているヒカリゴケ
ヒカリゴケは、発光はせず、かすかな光を反射して光っているように見えます。おそらく、暗い岩陰で光合成が出来るように太陽光を増幅しているのだと思います。他の植物が暗くて生きていけない環境でもヒカリゴケは太陽光を増幅して光合成が出来るので生存できたと思われます。
薬師岳の登山道は北斜面になっているため、湿気が多くコケがたくさん生えています。種類も多くコケ好きにはたまらない登山道だと思われます。たくさんの種類のコケがある中で、ヒカリゴケは暗がりで生きることで他のコケと棲み分けてきたと思われます。